朝4時起床。
緊張と興奮で眠れなかった。
今日は、ついにマチュピチュにたどり着くんだ。
「想像してごらんよ、きっと月明かりに照らされた山道を登っていくんだよ」
マチュピチュまでは村からバスが出ているけれど、もちろん歩きのコースもある。
「それってきっとすごく感動する道だと思う」、そんな思いをチリ人に伝えていたら、
「ロマンチストだね」って笑われた。
でもね、真っ暗闇の中、山と山の間に星が見えていて、
所々で、蛍が、チカ、、チカって光り、フッて消えていく様子は、幻想的すぎて、泣きそうだった。
もちろん泣きそうな主な原因は、道が苦しすぎた、ってのもあるんだけれど。
マチュピチュまで、約1時間、ひたすら階段を登っていく。
頭の中で「インカのバカヤロー」って何度叫んだことか。
でも、人間とは不思議なもので、いつかはちゃんとゴールにたどり着くんだから、すごいよね。

ツアーを申し込んだときに、「うちのツアーでは日本人は初めてだ」って言われたけれど、なんとなく意味がわかった気がする。
だって、この日「歩いてのぼってきた組」には日本人どころかアジア人さえみかけなかったもん。

6時になると、バスでやってきた組がどんどんたどり着く。
そんな彼らを前に、少しだけ優越感、そして達成感。

だって私たちは彼らが見ることの出来なかった風景を見ながらここにたどり着いたんだから。
6時にゲートが開くと、一斉にワイナピチュにむかう。
マチュピチュの反対側にそびえ立つこの山にのぼると、マチュピチュ遺跡が一望できるんだ。

入山制限がかかっているこの山への整理券を入手した後は、遺跡のツアー。
スペイン語なまりの英語をきくより、せっかくだからスペイン語を選んだほうがわかりやすい、そう思ってスペイン語ツアーにしたけれど、
連日の疲れと、昨晩の寝不足と、今朝の運動量で眠気マックス。
それに加えて、血糖値が下がってて、集中力が続かない。
ベンチの上で体育座りで一寝入り。

でもやっぱり、朝日がだんだん遺跡を照らしていく風景や、

カミソリ一枚も通らない緻密さでつみあげられた石の塀に
感動してしまう。
私たちが入手したワイナピチュ入山チケットの時間は10時からの回。
ここに車での予習でしらべた限りでは、ワイナピチュの頂上までの道は、「本当に苦しい」らしくて、
どれだけ苦しいのか、ビビッていたのだけれど、
フタをあけてみれば、トレッキング1日目や、今朝のマチュピチュまでの道のりに比べれば、
簡単な岩登りでした。
目安はだいたい1時間。
私は、9:58に入山して、10:25に頂上だったから、なかなかの好記録。
これも、日々アルプスを登っているベルギー人や、エクストリームスポーツが趣味のブラジル人と同じペースで歩き回ってきたおかげかしら。

10時入山組の中では、トップでの頂上。
まだ誰もいないワイナピチュのてっぺんを堪能。
今朝のぼってきた道が、眼下に見える。
本当にマチュピチュに来ちゃったんだなぁ、と実感。

マチュピチュ遺跡の反対側には、マチュピチュ山が見える。
噂によると、ワイナピチュより景色がよくて、登りがいがあるらしい。
でも、2時間の山道をのぼるほど、私の体力残ってるのかしら。
そんな心配をしながら、人が増えてきたので、ワイナピチュを下山。
とりあえずマチュピチュ山に向かっていく。
でもね、やっぱり途中でリタイヤ。
だってね、段々畑の風景気持ちよかったんだもん。
風が吹き抜けていて、さわやかで。
腿ももう動かなかったんだもん。ここが私の限界だったんだろうなぁ。
「ちょっとマチュピチュ山のぼってくるよ」そういって去っていったベルギー人は、やっぱりさすがだね。

私は、人が少ない段々畑のてっぺんで、再度お昼寝。
マチュピチュで昼寝するなんて贅沢だなぁ。
日本人が本当に多い。
それこそ、老若男女、学生から、おじいちゃん・おばあちゃんたちまで。
びっくりしちゃう。
それにしても、インカってすごいや。
カミソリ一枚さえ通らない石、って聞いても、信じていなかった。
けれど今、目の前にしてみると、針も通らないんじゃないかしら。
知ってる?
地震が起きたとき、クスコの町にあるコロニアル調の建物は崩壊してしまったけれど、
インカの技術で作られた建物は、現存しているんだって。

この3週間、いろんな場所に行って、いろんな場所を見てきたけれど、
マチュピチュを最後にとっておいて、正解だった。
ただ単純に列車で来ただけなら贅沢な私のことだから、ここまで感動はなかったかもしれない。
自分の足で苦しい思いをしてたどり着いたからこそ、感動・・・それ以上に、達成感が大きかったんだろうな。
マチュピチュを見る、というより、マチュピチュいたどり着くというのがゴールになっていたから。
もちろん、マチュピチュ山に登れなかったのは、悔しいし唯一の心残りだけれど、
楽しみは、少し次回に持ち越しておいた方がおもしろいしね。

さて、観光客の数が減ってきた。
放牧されている芝刈り機=リャマたちも、一カ所に集められ始めている。
いまだに、昔からテレビや写真で見てきたマチュピチュに自分がいることが信じられないけれど、
そろそろ、ツアー仲間との待ち合わせ時間。
残り90分の時間、後悔だけはしないように、この不思議に満ちあふれたパワースポットを歩き回ってみます。
20日目: クスコ⇒リマ